〈訴訟２〉労働訴訟・控訴審判決を目前に控えて

2023年5月18日、安西さんが黒瀬陽平氏および合同会社カオスラ・社員F・スタッフKに対して提起した労働訴訟の控訴審の判決言い渡しがあります。この訴訟は、安西さんが黒瀬氏から受けたセクシャルハラスメント、黒瀬氏および合同会社カオスラとその社員・スタッフから受けたパワーハラスメントについて、2021年2月1日に安西さんが訴えを起こしたものです。

東京地方裁判所による第一審判決においては、原告である安西さんの訴えの大部分は棄却されました。安西さんはこれを不当な判決であるとして控訴審を提起しました。これまで2回にわたって控訴審期日が行われ、そこでは裁判所による和解提案もありましたが、両者の和解は成立することはなく、判決言い渡しを待つことになりました。

安西さんは、告発の当初から会社の上司からのセクハラを発端にした不貞関係を理由に自分だけが会社を辞めざるを得なかった不均衡について、一貫して主張してきました。アートの現場における構造的問題である閉鎖的な環境の中で起こった性差や立場の差を利用したハラスメント行為に対して、高等裁判所によって正当な判断がなされることを望んでいます。

わたしたちは芸術作品の価値や芸術の歴史は、個人が持つ権利や尊厳が重んじられてこそ成立するものだと考えます。芸術表現に関わる人々がこうした固有の問題を深刻に捉え、自らの判断基準をもって判断することを期待し、美術業界ならびに社会が良い方向へ変化していくことを願っています。