声明:名誉毀損訴訟・控訴審に寄せて

2023年8月15日
団体代表 関優花

現在、合同会社カオスラ(以下、カオスラ)が安西彩乃さんとnote株式会社に対して提起した訴訟の控訴審が東京高等裁判所で行われています。この訴訟では、2020年8月1日に安西さんが発表した告発記事の内容が名誉毀損にあたるか否かが主な争点となっています。第一審判決では、安西さんが記事で公表した内容のうち、社員F氏、スタッフK氏による退職勧奨は認められなかったものの、黒瀬陽平氏のセクシャルハラスメントについては「黒瀬は、令和元年7月頃から、被告安西に対し、その立場を利用して、意に反する性的関係の要求というセクハラを継続的に行っていたと認められる。」 ★1  として認定されています。

控訴審においてカオスラは、黒瀬氏のセクシャルハラスメントに関する第一審の認定は誤りであると主張をしています。カオスラの控訴理由書では、セクシャルハラスメントの認定における争点は、被害者が「「拒絶することが容易か否か」ではなく、異性として好意を抱いていたか否か」が主戦場となるはず」であるとして、黒瀬氏の一連の行為はハラスメントと呼べるものではなかったとしています。★2  また、控訴審に際して新たに、黒瀬氏と黒瀬氏の友人二名(内一名は現代美術家)から陳述書が提出されました。いずれも黒瀬氏と安西さんの関係性が、通常の恋愛関係であった、拒絶・相談できなかったはずがない、恋愛関係にあったように見えた、という主張にとどまり、安西さんが当時おかれていた構造的な不均衡や心理状態は考慮されていません。

以上のような控訴審におけるカオスラの動きは、カオスラが黒瀬氏といまだ密接に関係を維持していること、カオスラと彼らを擁護する一部の人々が一連の問題に対する認識を全く改めていないということを示しています。

被害の始まりから4年以上がたった今もなお、安西さんの心的外傷は累積し続けています。現行の裁判制度は必ずしも被害を訴えた人を救済する制度となっていません。訴訟のプロセスは、被害の記憶に直接触れるものです。相手方から提出される書面には、安西さんの(ときに性的被害に関わる)過去の行動を非難する内容が書かれています。ハラスメントが被害者へ及ぼす精神的影響は、単回性のものではなく、長期にわたって継続するプロセスとして捉える必要があると考えます。

安西さんの受けた心的外傷は訴訟が終わってもなくなりません。加害側の反省が望めないなかで、被害当事者が負った傷を回復し、被害に関わる記憶から解放されるためには、周囲の人たちがその傷を認識し、被害当事者の安全が保障された環境を作ることが必要です。これは安西さんのほかにも、これまでに類似の被害を経験した人々、現在も被害の渦中にいる人々にとっても助けとなるはずです。加害側に力を与えるのは、第三者の沈黙と忘却です。

これまでの間、安西さんはときに体調を大きく崩しながらも、毅然とした態度で訴訟対応や情報発信を行い、安西さんが考える当事者としての責任を果たし続けてきました。そして自分で自分の自尊心を守り抜いてきました。私たちは、安西さんをはじめとした過去の被害者たちの抵抗の歴史の上に立っています。被害当事者の決死の告発によってのみ業界の体質改善がなされる現状が変化することをこころから望んでいます。


★1 第一審判決の詳細はこちら(「〈訴訟1〉第一審判決のお知らせ」)を参照ください。
★2   原告カオスラが提出した控訴理由書①、控訴理由書②は「訴訟書面」ページで公開しています。原告の主張の詳細はこちらを参照ください。なお、黒瀬氏及び友人2名の陳述書は非公開となります。


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